研磨の工程を説明します。

刀剣研磨は他の刃物研磨と違い刀身の美術鑑賞の見所を引き出すのを目的に研磨します。

大きく分けると下地研ぎ、仕上げ研ぎと分かれます。

下地研ぎ、仕上げ研ぎにも各工程が有ります。

その他、横手の筋切り、流しの線を入れるなど細かい工程が沢山有ります。

 

(下地研ぎ)

金剛砥

備水砥

改正砥

中名倉砥

細名倉砥

内曇刃砥

内曇地砥

 

(仕上げ研ぎ)

下刃艶

地艶

拭い

刃取り

磨き

ナルメ

研磨の作業場です。

下地研ぎの場合は研ぎ桶、研ぎ台、踏まえ木などを用意します。

研ぎ場には傾斜が付いていて水ハケと体重が刀身と砥石に掛かる様に成っています。

下地研ぎの構えです。

足で踏まえ木を踏んで砥石を押さえ、右膝を立て右脇を固定して、腰を浮かし尻は床几から軽く浮かせるようにして研磨します。

右手を主に研磨作業をして左手は添える様にします。

複雑な構えですが古くから伝わる伝統的な構えは刀剣研磨には一番適しており、構えを正しくしないと刀身も正確な形に成りません。

研磨作業で使用する砥石と道具。

錆びた刀身。

錆びた刀でも研磨作業で蘇らせる事が出来ます。

切先部分。

鎬、横手も不明瞭に成っているので正しく整形する必要が有る。

下地研ぎ

金剛砥

 

最初の工程、金剛砥を行う。錆を落とし、刃コボレや刃斑を直す。

鎬を平らに研磨して鎬線を出すようにする。

金剛砥には、120番~220番まで荒さに各種有り錆の深さ等に応じて使用する。

切先部分。小鎬の形を整え刃の曲線を整える様に作業をする。

横手線は無理に出すのでは無く自然に出る様にしないと仕上がってから凹んで見えたり不具合が起こるので注意する。

 

金剛砥が無い時代には天然の大村砥、笹口砥、等が使用された。

備水砥

 

備水砥で金剛砥の目を除去しながら刀身の形を整える。

棟、鎬地は斜めに研ぐ。これを筋違い(スジカイ)に研ぐと言う。鎬地、棟は真平に成る様に研磨する。

 

平地は刀身に対して横向きに砥石目が付く様に研ぐ。

これをキリに研ぐ、と言う。

平地は緩く曲線を描く様に研磨する。これを肉置きと言う。

切先部分。

切先はキリに研ぎ綺麗な肉置きにしないと横手線や小鎬の線が正しく出ない。

三つ角も正しく研ぐ。

 

古くは常見寺砥が使われ、その後、伊予砥、備水砥が使われ、現在は人造の備水砥を使う事が多い。

改正砥

 

備水砥の砥石目を取る。

筋違いに研ぐ。

切先には使用しない。

 

以前は山形県産の天然砥石が使用されたが現在は採掘がおこなわれておらず、人造の改正砥を使用する事が多い。

中名倉砥

 

改正砥の砥石目を取りながら刀身に対して立て方向に研ぐ。

これをタツに(を)突くと言う。

 

以前は愛知県三河産の天然砥石を使用したが現在は採掘量が少なく人造砥石を使用する事が多い。

 

切先部分

 

キリに研ぐ。備水砥の砥石目が残らない様に作業する。

小鎬、横手が寄り明瞭に成る。

細名倉砥

 

中名倉砥と同様にタツに研ぐ。

砥石が寄り細かいので、砥石目が素麺を並べた様に成る。

画像の天然砥石を使用すると刃文が見える様に成る。

 

天然の細名倉は中名倉砥同じ産地から層を違えて産出される。

元来、取れる量が少なく現在新規で掘り出される物は、ほぼ無く貴重な砥石。

 

人造の細名倉砥を使用する場合も多い。

内曇刃砥

 

内曇砥の軟質な物を使用する。

引く時に力を込めて作業するので内曇を引く、と言う。

 

砥石が細かいので力を込めて引かないと細名倉砥の目を取る事が出来ない。

 

内曇刃砥を引くと刃文の匂口が明瞭に見えてくる。

細名倉砥の砥石目を取るだけでは無く、念入りに作業をして刃文の働き等を引き出すようにする。

切先はキリに研ぐ。

 

内曇砥は京都で産出される砥石で、これは人造砥石の代用品は無い。

砥石に寄って刀身に対する研磨作用に差が出るので、刀身に有った物を選んで使用する。

内曇地砥

 

内曇砥の硬質な物を使用して地鉄の鍛錬肌、地沸、地景等の働きを引き出すようにする。

刃砥同様に引いて作業する。

 

刃の部分は避けて地鉄、鎬地、棟を研ぐ。

切先には使用しない。

 

仕上げ研ぎ

仕上げ研ぎは研ぎ箱を用意して、床几に座り作業をする。

研磨する際は研ぎ柄をしようする。

 

 

下刃艶

 

刃艶を親指で押さえ内曇砥の研ぎ汁を付けて擦り刃を白く滑らかにする。

 

刃艶は内曇砥を薄く擦って和紙と漆とで裏打ちした物で、この後刃取りにもしようする。

既製品は無いので研ぎ師が自分で作る。

 

 

地艶

 

地艶は鳴滝砥を薄く擦り、細かく割って使用する。

これを砕き地艶と言う。

他に刃艶の様に裏打ちした貼地艶も有る。流派の違いや刀身の形状で、どちらを使用するか変わって来る。

 

鳴滝砥は京都に産出する砥石で人造の代用品は無い。

刀身に乗せて親指で押さえて作業をする。

柔らかい物から初めて硬い物で仕上げる。二段階か三段階ぐらいで作業をする。

 

地艶は作業を誤るとヒケ傷が付いてしまうので慎重に作業をする。

充分に行い地鉄の肌や働きを引き出す様にする。

拭い

 

拭いは刀剣鍛錬の際に刀身から剥がれでる鉄肌を乳鉢で極細かく擦り油で擦った物で作るのには大変な手間が掛かる。

 

和紙を十枚程重ねた物で濾して刀身に乗せ綿で擦って作業をする。

 

平地は拭いを行い仕上がりとなる。

 

 

刃取り

 

拭いを行うと刃文も黒く成るので刃取りを行い刃を白くする。刃艶をしようする。

 

この際は刃艶を丸形や俵型に成型して親指で押さえて作業をする。

 

刃取りは刃文に沿って行うものだが、必ずしも刃文通りでは無く刀の美観を増して特徴が寄り見える様に作業する必要が有る。但し、元の刃文から離れ過ぎてはいけない。

刃取り

磨き

 

鎬地、棟を鋼鉄製の磨き棒で磨き鏡面的な光沢を出すようにする。

 

作業は下、中、上磨きと三段階で段々と細かくして行く。

 

ハバキ元には流しの線を入れる。これは9本か11本の奇数にする決まりが有る。

棟先には表裏3本ずつ入れる。

 

ナルメ

 

ナルメの作業の際にはナルメ台と言う道具を用意して下地研ぎを同じ構えで行う。

ナルメの作業を行う際は、最初に横手の筋切りをする。

下地研ぎで決めた横手線に寄り明瞭にする。

横手に当て竹を当てて小さな刃艶をヘラで押さえて横手線を出す。

三つ角から刃の角まで綺麗な線を出すようにする。

切先を仕上げるのをナルメると言う。

ムラが無い様に横手線まで綺麗にナルメる事が重要。

 

ナルメを終えると研磨作業は終了する。

差し込み研ぎ

通常行われる金肌拭い研磨と別に差し込み研ぎと言う研磨方法も有ります。

金肌拭い刃取りをする研磨方法は明治以前に発達した方法で、それ以前は差し込み研ぎが主流でした。

差し込み研ぎは、やや地味だが刃文が手に取って良く見える事など利点も有り現在でも行われています。

ただ、刃縁が締まり気味で明るい刃文で無いとあまり効果的では有りません。

差し込み研ぎでも下地研ぎは同じ様に行う。

 

内曇地砥は、あまり肌を起こし過ぎると拭いを入れる際に地鉄がガサ付いてしまうので成るべく押さえて黒く成る様に作業をする。

 

下刃艶は丁寧に行う。

地艶も地砥同様、あまり肌を起こさない様に作業をする。

成るべく肌を押さえて黒く成る様に留意する。

 

刃取りは地艶の後、刃文に沿って成るべく地鉄に食み出さないように刃文に忠実に行う。

刃が白く成る様に丁寧に行う必要が有る。

拭いは金肌拭いとは成分が違い、磁鉄鉱を細かく擦った物や、対馬砥を細かく擦った物を使用する。

対馬砥を使用した物は対馬拭いと言う。

 

拭いを行うと地鉄は黒く成り刃が白く浮かび上がる。

刀身と研磨方法が合うと自然で床しい仕上がりとなる。

 

磨き、ナルメを行い作業を終える。